えーと、ボードゲームから手を引こうと思います。飽きたので。
少し人生を踏んだ人ならわかると思うのですが、会社辞めるときと同じで、人間辞めることに明確な理由がひとつあるケースは稀有で、今回も、積もり積もって辞めるという選択をした、というのが表現として正しい感じになります。
言い方を変えるなら、プラスのものと、マイナスのものを秤にかけたときに、今年に入ってからというもの圧倒的にマイナスが多く、結果モチベーションが保てなくなった、という表現が適切かなあと。つまり飽きた。
何がプラスになって、何がマイナスになるか、っていうのは人それぞれですが、僕の場合積もったマイナスは以下の通り。
・売れるものも、売り方も正解が見えてしまった
僕は売り方とか、マーケティングとか、ランキングとかが大好きで、何をどうすれば売れる、というのを試してはデータを取って次の手を……的に試行錯誤することに至上の喜びを感じるのだけど、もう概ね「こうすれば正解」みたいなのが見えてしまった。勝ち筋の見えたゲームを続けるか?という話で、勝つのが好きな人なら続けるだろうが僕は戦うのが好きで、市場に興味がなくなった。
・業界が概ね安定した
これまではかなりリスクの高い賭けに勝たなければ大きな利益を上げることは難しかったが、今となってはそこそこちゃんとやることをやってしまえば余程の愚策を打っていない限りは1タイトル50万の利益が出せるくらいには業界の規模が大きくなった。ブームも大阪まで届き、全国区で広がるのも確定、危ない橋ではなくなった。危険万歳民としては、こんなに大きな橋を渡ることにはさっぱりワクテカしない。地雷処理みたいに先頭を歩こうにも、どこにも地雷が埋まってない。
・新作の内容が2度も被ってしまった上にこっちのほうがつまらない
ホラー三部作の2タイトル目を想定していた「サカサオンナ」、昨年仮組みした段階で「マジックメイズ」、今のバージョンが「文絵のために」とダダ被り。しかもいずれのタイトルも強烈に面白く、質ではこちらが大きく劣るという困った事態に。先見の明的な意味合いでは作るものは間違っていないが、後手を踏んで質で歯がたたないのでは出す意味がないのも事実。新作を出すに出せなくなってしまった。
・今以上のゲームを開発するには知力が頭打ち
「売れるゲームを作る」のと「新しいゲームを作る」のと「緻密なゲームを作る」のは全部別で、僕はこのうち「緻密なゲームを作る」能力が大きく欠けていて、知力レベルの問題でこれは改善の余地がない。上記、マジックメイズや文絵と被ったならそれを超えるゲームを作れればいいが、基本システムが重複してしまった時点で僕の力ではどうしようもない。
・HDが吹っ飛んで、作業データが丸々駄目になった
バックアップを取ってなかったので、丸5年分くらいのデータが吹っ飛んだ。どのくらいデータが戻るかわからないが、最短でも丸二ヶ月再販等もできず、やりかけの作業も全部最初からに。復旧に20万、ゲームマーケット大阪、春のスペース代+旅費で12万オーバーとか大赤字。復旧の是非がわかるまで2ヶ月生殺しの上、イベントに出ても土下座祭り。何の拷問かという事態に。結局その後、吹き飛んだデータは全く戻らなかった。
・ギブアンドテイクどころか与えてもマイナスになることがある
基本的に、後から来る人に道を示すのを目的に色々教えたり、ノウハウ会を開いたりしていたのだけれど、これはギブはあってもテイクはない。業界全体が活気づくなら別にいいと思ってたんだけども、返ってこないどころか唾を吐きかけられることまであって、あまりのことに善意を継続する意味を見つけられなくなってしまった。業界のことを一生懸命考えてキツめのこと色々言って、「意識高い系」って後ろ指さされたのも正直かなり応えた。
・近しい人は何もしてくれない
ハコオンナのマルチメディア化にあたり、過去に世話になった人に恩返しとばかりに仕事を振ってみたけれど、半年以上待って何の結果も出してくれなかった。結局、たくさん来ていたお誘いを断るだけ断って降り出し戻ることに。古い戦友と一緒に仕事ができることを楽しみにしていたのだけれど、そういう目はなかった。
・大阪に来て流れが見えなくなった
引っ越すまではどのくらい差があるものかと思っていたけれど、いろいろな人が動き回っている東京と、その流れを受けてじわじわと成長している大阪では人の動きも考え方も全く違う。大阪で採算を取るならいいのだけれど、大阪にいて東京メインでものを売ることは、少なくとも僕の売り方では殊のほか難しく、だからといって大阪にいても通用する「後方でも売れる」新しい売り方を勉強しようとは思えなかった。
・自分で文章を書くことになった
紆余曲折あってドラマCDの台本を自分で書くことになった。シナリオ書きを引退したことで、頭の中に飼っていた人たちを苦労して全員追い出してボードゲームに特化したのに、数年前の頭に戻さなければならなくなった。無事脱稿したもののの、また頭の中の人を追い出すのには月単位で時間がかかるし、この人達が頭の中にいる以上ボードゲーム思考にもならないので、ここが転機なら物書きに戻る選択もできる状態になってしまった。そしてその後、ドラマCD企画自体が頓挫した。
……とまあ、もっとこういろいろとあったのだけれど、だいたいこんな。
「事象×距離=威力」的な意味で、眼の前で起こったこと、近い人にされたこと、というのは、とても強い力を持っていて、どれほどユーザーさんが応援してくれても、楽しく遊んでくれても、身近な人や目の前で起こったことがこれだけ残念だと到底プラスになんかなりようもなく、ここまでか、という判断をしました。新作を期待してくれていた人たち、本当に申し訳ない。
いろいろな人としていた約束を果たせないまま去ることについても、本当に申し訳ない。
僕も力が及ぶなら皆と一緒に未来を築きたかったのだけれど、あまりにマイナスが多すぎて、自分の好奇心が満たせない場所で居残るだけのプラス要素を並べることができませんでした。
というわけで、今作っているハコオンナのドラマCDを最後に、ぜんぜん違う業種……は流石に無理なので、今のスキルがある程度生かせる場所にフラフラと旅立ちます。まあ、持っているスキルが特殊ですからそんなには遠くにはいけないと思うので、半年とか、一年とかして近場で見かけたら笑ってやってください。蓄えもあるのでなんとかなるんじゃないかなあ、というくらいの、考えなしの流浪の旅です。
あ、趣味としては今後もボードゲームは遊びますので、ボドゲカフェとかで見かけたら気軽に遊んであげてくださいね。
それでは、そんな感じで。皆さん達者で。
春ゲムマは企業ブースを取ってしまったのに売るモノがハコオンナしかないので、友人のサークルさんたちのゲームを委託したり場所貸ししたりしています。エジンを謝らせたい人は顔出してください。そうでない人はそっと消えるので放っておいて頂ければ幸いです(><)。
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