2020年12月15日

「マダミスを作る人に向けてのちょっとした向き不向き」

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■自己紹介
えー私、パッケージでリリースされていますマーダーミステリー「月落としの木霊」、こちらに登場しておりますボドゲ探偵、江神原業一郎と申しますー。
はじめましての方がほとんどだとは思いますが、何人かの方はもう既にお会いしたどころか、中には私を演じられた方もいらっしゃると思いますー。えー、その節は大変お世話になりましたー。はいー。
このテキスト、本来なら江神号氏が書くはずだったのですが、いまだタイトル数1本、大した活躍もしない立場でゲームマーケット大将(何その新しい呼び方)刈谷さんの直後を任される重責に耐えきれず逃げ出してしまいましたので急遽私が代役を務めさせていただきますー。

■本題
さてさて、「マーダーミステリーアドベントカレンダー」ということで、ここまで非常に頭の切れる高名な方々が様々なノウハウを話してくださっていますー。ぽっと出の私が今更何を話してもアレな感じですので、ならではの視点でお話しできること、ということでー、えー、「マダミスを作る人に向けてのちょっとした向き不向き」についてお話ししたいと思いますー。私のように少しばかり頭の残念な人限定のお話になってしまいますので、キレモノの皆さまは今日のアドベントカレンダーはお休みということで、そういう人もいるのか、くらいで見ていただければと思いますー。

■先天性、後天性の能力
えー、では何の話をするのかと言いますと、知能指数の話ですー。
人間の能力には先天性のものと後天性のものがありますー。つまりのところ人間の各能力は「鍛えてどうにかなる範囲」がモノによって大きく異なっているというわけですー。
例えば「筋力」は、ある程度のところまでは比較的誰でも鍛えられますー。ところが「瞬発力」や「動体視力」は生涯衰えることはあっても、鍛えたところで大きく成長することはほとんどありません。同じく「器用さ」なんかも、生まれ持ったものに依る部分が大きい能力です。
頭を使う能力においては各能力の「鍛えてどうにかなる範囲」の差はより顕著ですー。空間把握能力、言語能力、想像力、観察力なんかはそこそこ伸びしろもありますが、マーダーミステリーを作るにあたり最も必要とされる「知能指数」。この能力に関しましては残念ながら、幼年期を過ぎるとほぼ伸びしろがありません。

■知能指数が要求されるもの
「知能指数」が最も生かされるのは「プロセス」の構築時です。
まず動物の話をいたしましょう。猫は比較的知能指数の高い生き物です。高いところに登るのに、どの順で物を登っていけば目指すところにたどり着けるかを、4段階くらいまで考えられます。Aにたどり着くのに、高さの違う踏み台B、C、Dを順にたどっていけばいい、という判断ができる感じです。ところがネズミやフェレットなどは、2段階以上のプロセスを構築することができません。Aに行くためにBCDの踏み台があっても、順に上るということを考えられず、Aに通じていることが認識できないんです。ネズミたちは、たまたまBを登ったらCがあったので登ってみた、もう一つ登ったらDがあった、その上にAがある!やったいける!というような場当たり的な思考で動いています。
では人間はどうでしょうか。面白いもので、人間の知能指数は個体によって大きく異なっています。短絡的な思考しか持たない人もいれば、十年、一年先などの非常に遠い目標に到達する長い過程を見越して動ける人もいたりします。
あなたは、ルービックキューブは何面揃えられるでしょか。詰将棋は何手詰めまで解けますか?ボードゲームでいうなら、「宝石の煌めき」がこの「プロセス」のゲームです。このゲームが得意な人はまぁIQが高いと言えます。勝利する為には最上段のカードを獲得するためのプロセスを初手から見つけて動くことが重要になりますが、知能指数が低い人にはそれは非常に困難なことなんです。かくいう私も、最下段のカードばかり取ってしまうので、宝石の煌めき、何度やって誰とやっても一向に勝てませんー。

■知能指数が足りないと発生するケース
マーダーミステリーを作るにあたっては、この「知能指数(IQ)=プロセスを構築する能力」は必要不可欠な能力になります。
マーダーミステリーは(大抵はゲーム開始の前段階で)、多数の登場人物が、同じ時間軸の中で複雑に思惑を絡ませながら場所を移動し、各自の目撃情報がアリバイになったり、鉢合わせがトラブルを生んだりしますー。
これを成立されるためには、「どの時間に誰がどこにいて何をしている」を、すべての登場人物の分把握していなければなりません。並行して動き回る多くの登場人物を管理するためには高い知能指数が必要で、自分の能力で処理できる限界を超えた人数を処理しようとすると処理落ちし、そこに矛盾が発生します。結果起こる事例はこうです。「AさんはBさんと通路ですれ違っているはずなのにハンドアウトに記載がない」「Aさんが20:00にカギを閉めたはずのドアを通って21:00にBさんは問題なく部屋に入ってきた」……たまに散見するこれらのケースは、作者がうっかり見落としていたのではなく、その矛盾が起こっていることを能力的に把握できなかったゆえに発生しているんです。いくら読み直しても、その事象を処理するのに必要な知能指数を持っていない場合、この手の矛盾にはほとんど気が付くことができません。
えー、小説や普通の物語であれば、多少の矛盾は目をつぶることができます。ですが、マーダーミステリーにおいては時間軸の狂いや類似する論理的矛盾は致命的ですー。矛盾しないようにハンドアウトの行動を書くことができないのであれば、それはマーダーミステリーを作る適性がない、つまり、知能指数が低いならマーダーミステリーを作るべきではない、ということになります。残酷なことに知能指数は後天的にほぼ伸びない能力ですから、勉強や努力で何とかなる問題でもないのでなおさら向いていない、と言えてしまいます。

■適性と武器を把握しよう
ですから、もしマーダーミステリーを作ってみたいと思うのであれば、まず自分に「マーダーミステリーを作るのに最低限必要な知能指数が備わっているか」を調べるべきです。詰将棋やルービックキューブで、適性を見てみてください。はっきりと向き不向きがわかります。7手詰めがとけたり、ルービックキューブが全面揃えられるなら10人以上登場人物がいるような大掛かりなマダミスも(面白くなるかどうかは別問題として)作れるはずです。
もしそれらが苦手でもなおマーダーミステリーを作りたいのであれば、プレイヤー人数の少ないものを作ってください。3手詰めの詰将棋なら解ける、ルービックキューブが3面なら揃えられる、というのであれば、プレイヤー3人か4人程度までの、少人数のものならどうにか作ることができますー。それでも多少の矛盾は孕んでしまいますが、数度のテストプレイで修正可能な範囲で収まります。えー、ちょうど江神号氏がこのくらいの知能指数で、少人数ならギリギリで処理できている感じですのでー。

繰り返しになりますが、知能指数は先天性のものです。あとからどう鍛えたところで伸びるものではありません。ダチョウに空は飛べないんです。江神号氏は知能指数の相当低い人間ですが、それを認知してプレイヤー数を自分で処理可能な域まで絞り、その代わりに得意な3DCGやコンポーネントに力を入れ、少人数マダミスなりに盛り上げる施策も散々盛り込むことで、販売数的には商業タイトルとタメを張るくらいには結果を出せていますー。しかしそれは、飛ぶことが不可能だと知っているからこそ選べた道だということですー。飛べないなら、飛ぶ以外の道を選べばいいということで。はいー。

■最後に
えー、マダミスの制作は、様々な才能を生かせる非常に面白いものですー。色んなジャンル出身の色んな人が、いろんな武器を持ってこの場に集まってきていますー。ただ、タイトル数もどんどん増える玉石混淆、群雄割拠の中で、思うように形にできず失敗するケースも多く見かけるようになってきましたー。自分が他より長けている部分、マダミスに絶対に必要なもの、そして今求められているもの、それらをちゃんと把握して、自分なりのベストな形を考えられれば、失敗を極力抑え、イイものが作れるはずですー。
私ほど頭の悪い作り手もそうそういないとは思いますが、ひとつ指針になるものとして、見えにくい部分に私なりにスポットを当ててみました。誰かのお役に立てればというところですー。随分長くなりましたが、いかがでしたでしょうかー。

それでは次回作「火纏りの男」でまたお会いできればというところで。江神探偵事務所がお送りするワンタイムミステリー「月落としの木霊」から、江神原業一郎でしたー。


わかりやすさ優先で「知能指数」って言葉使ったけど本来適切じゃないよなあ……


posted by エジンガー at 13:21| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする